第1章 総則(第1条―第8条)/感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(平成十年十月二日法律第114号)
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最終改正:平成一五年一〇月一六日法律第145号
| (最終改正までの未施行法令) |
| 平成十五年十月十六日法律第145号 | (一部未施行) |
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前文
人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。
医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。
一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。
ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条
この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条
感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権に配慮しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条
国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた感染症に関する正しい知識の普及、感染症に関する情報の収集、整理、分析及び提供、感染症に関する研究の推進、感染症の病原体等の検査能力の向上並びに感染症の予防に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権の保護に配慮しなければならない。
2
国及び地方公共団体は、感染症の予防に関する施策が総合的かつ迅速に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
3
国は、感染症に関する情報の収集及び研究並びに感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進、感染症の病原体等の検査の実施等を図るための体制を整備し、国際的な連携を確保するよう努めるとともに、地方公共団体に対し前2項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。
(国民の責務)
第4条
国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。
(医師等の責務)
第5条
医師その他の医療関係者は、感染症の予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力し、その予防に寄与するよう努めるとともに、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
2
病院、診療所、老人福祉施設等の施設の開設者及び管理者は、当該施設において感染症が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(獣医師等の責務)
第5条の2
獣医師その他の獣医療関係者は、感染症の予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力するとともに、その予防に寄与するよう努めなければならない。
2
動物等取扱業者(動物又はその死体の輸入、保管、貸出し、販売又は遊園地、動物園、博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場する施設若しくは場所における展示を業として行う者をいう。)は、その輸入し、保管し、貸出しを行い、販売し、又は展示する動物又はその死体が感染症を人に感染させることがないように、感染症の予防に関する知識及び技術の習得、動物又はその死体の適切な管理その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(定義)
第6条
この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、指定感染症及び新感染症をいう。
2
この法律において「一類感染症」とは、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。)、痘そう、ペスト、マールブルグ病及びラッサ熱をいう。
3
この法律において「二類感染症」とは、急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス及びパラチフスをいう。
4
この法律において「三類感染症」とは、腸管出血性大腸菌感染症をいう。
5
この法律において「四類感染症」とは、E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ、マラリアその他の既に知られている感染性の疾病であって、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
6
この法律において「五類感染症」とは、インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く。)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症その他の既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。
7
この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症及び三類感染症を除く。)であって、第3章から第6章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
8
この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。
9
この法律において「疑似症患者」とは、感染症の疑似症を呈している者をいう。
10
この法律において「無症状病原体保有者」とは、感染症の病原体を保有している者であって当該感染症の症状を呈していないものをいう。
11
この法律において「感染症指定医療機関」とは、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関をいう。
12
この法律において「特定感染症指定医療機関」とは、新感染症の所見がある者又は一類感染症若しくは二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として厚生労働大臣が指定した病院をいう。
13
この法律において「第一種感染症指定医療機関」とは、一類感染症又は二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院をいう。
14
この法律において「第二種感染症指定医療機関」とは、二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院をいう。
(指定感染症に対するこの法律の準用)
第7条
指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第3章から第6章まで及び第8章から第10章までの規定の全部又は一部を準用する。
2
前項の政令で定められた期間は、当該政令で定められた疾病について同項の政令により準用することとされた規定を当該期間の経過後なお準用することが特に必要であると認められる場合は、一年以内の政令で定める期間に限り延長することができる。
3
厚生労働大臣は、前2項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。
(疑似症患者及び無症状病原体保有者に対するこの法律の適用)
第8条
一類感染症の疑似症患者又は二類感染症のうち政令で定めるものの疑似症患者については、それぞれ一類感染症の患者又は二類感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。
2
一類感染症の無症状病原体保有者については、一類感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。
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